かつては営業資料や展示会での対面説明が主戦場だったBtoBマーケティングも、今やデジタル化が進み、企業間取引のあり方そのものが大きく変容しています。その中でも特に注目されているのが「動画」の活用です。動画は感覚的に理解しやすく、製品やサービスの価値を短時間で伝える手段として、BtoCにとどまらずBtoB領域でも急速に浸透しています。
本稿では、BtoBマーケティングにおける動画の重要性に焦点を当て、WEBサイトで成果を出すための最新戦略を5つの観点から深掘りしていきます。これから動画活用を本格化したい企業にとって、実践的なヒントとなる内容をお届けします。
なぜ今、BtoBマーケティングに動画が必要なのか
BtoBの購買行動は、近年ますます「自己完結型」になってきています。調査によれば、企業の購買担当者の約70%が、営業にコンタクトを取る前に情報収集をほぼ終えているとされています。つまり、WEB上での第一印象がビジネスチャンスを左右する時代において、「読ませる」コンテンツよりも「見せて伝える」コンテンツの価値が高まっているのです。
動画は、企業理念や技術的な強み、導入事例などを短時間でわかりやすく伝えるのに非常に効果的です。さらに、SEOにも貢献し、WEBサイトの滞在時間を延ばす効果や、コンバージョンに至る確率を高めるといった副次的メリットも見逃せません。
BtoB商材の多くは「難解で分かりにくい」というハードルがありますが、動画はこの壁を取り払うための鍵となるのです。
BtoB動画の基本は“課題解決型ストーリー”
BtoB領域で成果を上げる動画には共通点があります。それは、単なる商品説明ではなく、「課題解決」を軸に構成されたストーリーであるという点です。顧客は製品そのものではなく、「自社の問題をどう解決できるか」に強く関心を持っています。つまり、動画は機能紹介ではなく、顧客の悩みからスタートし、どのようにしてその悩みを解決できるのかを描くストーリー仕立てが効果的です。
たとえば、あるIT企業が提供する業務自動化ソリューションの紹介動画では、まず「今の業務でどれだけのムダが生まれているか」を数値と現場映像で見せ、その後にソリューション導入後の改善イメージをシミュレーションで描きます。このような構成により、視聴者は「これは自社のことだ」と共感し、製品にリアルな価値を感じるようになるのです。
また、ナレーションや字幕を工夫することで、音声なしでも理解できる設計にすることも、視聴のハードルを下げるポイントとなります。
WEBサイトに組み込む際の最適な動画活用法
動画の制作だけで満足してはいけません。実際に成果を出すには、WEBサイトへの組み込み方に戦略が求められます。よくある失敗例は、動画をただトップページに埋め込んだだけで終わってしまうケースです。重要なのは「ユーザーの導線に沿って最適な位置に配置すること」と「動画の目的に応じた誘導設計」です。
たとえば、サービス紹介ページに設置する動画は、機能よりも“導入後の変化”を強調し、導入事例や数値での成果を提示する内容が好まれます。一方、採用ページでは「企業文化」や「社員の声」を伝えることで、共感と信頼を生み出せます。
また、動画視聴後に「資料ダウンロード」「お問い合わせ」へ自然につながるCTA(コールトゥアクション)を明示することも欠かせません。動画をただの装飾要素ではなく、CVにつなげる“導線の一部”として位置づけることが、WEBサイトで成果を出す秘訣です。
再生される動画の条件とは ターゲットと文脈を読み解く
どれだけ手間をかけて動画を制作しても、再生されなければ意味がありません。再生されるためには「ターゲット視点」と「文脈設計」がカギを握ります。BtoBでは、視聴者が“明確な目的”を持って動画を見るケースが多いため、「短く」「的確に」「求めている情報を提示する」ことが基本となります。
たとえば、10分を超える長尺の動画を1本つくるより、テーマごとに2~3分で分割された複数本の動画を用意したほうが、視聴されやすく、必要な情報へアクセスしやすいのです。また、動画の冒頭3秒で「誰にとって、何のメリットがあるのか」を明示することで、離脱率を大きく下げることができます。
さらに、動画が埋め込まれるページの内容や、見出し・説明文との整合性が取れていないと、視聴されずに終わることもあります。常に「この動画は、誰にとってどんな状況で見られるか?」という仮説を立てて設計することが重要です。
データで改善するPDCA型動画運用のすすめ
動画戦略は「作って終わり」ではなく、「運用して育てる」ものです。再生回数、離脱タイミング、視聴完了率、CVRなどの指標を元にしたPDCAが、成果を生む最大のポイントとなります。たとえば、ある製造業の企業は、営業ページに埋め込んだ動画が思うように再生されなかったため、動画のサムネイルとタイトルを変更。結果、再生率が30%以上改善しました。
また、動画の内容そのものも、視聴ログを見れば改善点が浮かび上がります。「どこで離脱が多いか」「どのセリフで視聴が途切れているか」を把握することで、より伝わる構成へとブラッシュアップが可能です。
YouTubeやVimeo、Wistiaなどの動画プラットフォームには分析機能が備わっており、Googleアナリティクスとの連携によってWEBサイト全体の動線分析も可能になります。こうしたデータを用いた改善活動は、動画という媒体のROIを最大化するための必須アクションです。
まとめ
動画はBtoBマーケティングにおいて「視覚と言葉で説得する最強のツール」です。しかし、ただ作るだけでは成果にはつながりません。重要なのは、ターゲットの課題を深く理解し、課題解決型のストーリーで構成し、適切な場所・文脈に配置し、さらにデータ分析をもとに継続的に改善していく運用の視点です。
WEBサイト上で成果を出すためには、「誰が、何の目的で、どこでこの動画を見るのか?」という問いに明確な答えを持つこと。そして、視聴体験をビジネス成果へとつなげる“設計力”と“運用力”が、今後のBtoB動画戦略の成否を分けるカギになるでしょう。
動画という表現手段は、正しく活用すれば、従来のテキストや資料では伝えきれなかった価値を一瞬で伝え、見込み顧客の心を動かす強力な武器となります。貴社のWEBサイトでも、今こそ“動画主戦場”へのシフトを加速させてはいかがでしょうか。